[117] そもそも賃金は、みんなに支払われるのでしょうか?

さて、前回と前々回は毎月勤労統計(マイキン)について、解説をしました。

「賃金」に関する報道はテレビ、ネットなど、そして新聞にもたくさん記事が掲載されています。

「賃金」の話題になると、ご自身の「給与」「収入」「所得」のことを言っていると思いがちですが、すこし立ち止まってよく考えてみる必要があります。

そもそも「賃金」とは、だれしも受け取っているものなのでしょうか?

それを明らかにするためには「賃金」がどのような性質のものなのかを、明らかにする必要がありそうです。

その手掛かりが、労働基準法の「賃金」の定義にありそうです。

「この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。」(労基法第11条)

「使用者が労働者に」というところがポイントです。

わたしのように個人事業主として活動している人には、残念ながら…「賃金」はありません。

もちろんわたしは収入の中から生活費をねん出したりしていますが、会計上は「事業主貸」ということで「給与」でも「手当」でもありません。

もし将来法人成りをしたならば、法人という使用者から労働の対償を受けると考えられることになるならば、「報酬」と呼ばれていても「賃金」となる可能性があります。

法人という自然人ではない「人」という考え方が、若いころはよくわかりませんでした。
法人の社長と個人事業主の区別がついていなかったのでしょうね…

すこしアホだった過去のわたしのことはさておき…

ここまでくると少し難しいので、平たく考えておきましょう…

「賃金」とは「お勤め人」のお給料のことをいっているのだ!ということがそもそも大切なポイントだと思っておいて差支えはないはずです。

平成28年度の労働力調査によれば、15歳から64歳までの労働力人口は6,648万人。(当該年齢での非労働力人口は、4,423万人です。)

そのうち完全失業者が3%程度の208万人で、残りが働いている人、つまり就業者は6,440万人。(完全失業率は、いまはもう少しさがって2.5%程度だのはずです。)

その就業者数のなかに私のような自営業者等は、10人に1人程度の681万人います。

とすると「賃金」をもらっているのは、残りの5,729万人のことを言っているのだということになります。

わたしは勤め人のときに、人事部勤務を8年ぐらいしていましたので、何度もこの条文(労基法11条)をよんでいたはずですが、このことにあまりピンと来ていませんでした…

わたしだけだと思いますが、勤め人をしていると鈍くなる傾向がありますので、注意が必要です。

これが、賃金のそもそもの大前提です。

毎月勤労統計(マイキン)で対象にしているのは、

働いている人(就業者)の約9割の話だということです。

統計を読むときには、このような大前提をおさえると、あとの理解が楽になります。


2018年03月13日|ブログのカテゴリー:賃金(基本給 手当 賞与)